はじまり
夜の帳と静寂が支配するとある夏の夜、遠い水平線の彼方向こうに一筋の光が横切った。
いつもはとうに寝ている時間。たまたま窓を開けて自分の中の葛藤を浄化していたまさにその時の出来事だった。
きっとこの光を見たのは私しかいない。
別に皆が知るべきほどの出来事ではない。
それでもただ記しておきたい。
普段は大人しく、何を考えているか分からないとよく言われる彼女は、真剣な面付きで一冊のノートを手に取り、控えめで几帳面な文字を綴り始めた。
そうして書き記された彼女の日記は、後に宇宙の概念を覆す記録であったことが発覚し、ありとあらゆる争いを生み、最後には誰もが目を開けていられなくなるような膨大な光を放ち、自らを犠牲にして地球を救うのであった。隣の星に住む一人の少女がその光を目撃していたとは知らずに。
そんな大げさなストーリーを頭の中で繰り広げながら、「日記でもはじめてみっか」とみねらるはひとり呟いた。
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